2012年4月28日土曜日

音楽を聴くことができなかったとき

ピアノをずっと弾いてきて、音楽の勉強までしたのに
その時は、音楽を聴くことが、まったく、できませんでした。

わたしは、赤ちゃんの頃から、アトピー性皮膚炎で
大人になってからも治らず

ステロイドを使った治療が悪いものと報道されたその頃
やはり、わたしもステロイドを拒否していました。

いままで症状を抑えていた薬を急に断ったのですから
もちろん、みるみるうちに、悪化しました。

特に、足は火傷のように熱をもち
包帯ぐるぐる巻きで
ほとんど寝たきりのような状態になってしまいました。

近くのコンビニへ行くのにも
やっとのことで、着替えていくような状態でした。

夜、眠りにつく時、
「このまま、明日の朝が来なければいい」と思いました。

ホトホト、疲れ果てて、現実に向かい合う気力がありませんでした。

そんな時、ステロイド悪の呪縛を取ってくださった方が居て
使用することによって、とても楽になりました。

久しぶりに、旦那さんと近くのスーパーへ
買い物に行くことが出来ました。

駐車場で車から降りた時
世界が広がったような、自由になれたような
開放的な気持ちになったことを、覚えています。

スーパーに本屋さんがあり、彼が本を見ている間
わたしは、近くのワゴンに入れられたCDを見ていました。

いわゆる廉価盤と言われる安いCDで
有名な曲のタイトルが並ぶのですが
少し録音が古いものです。

中に、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番があり
由緒あるオーケストラの演奏だったことと
久しぶりの外出で、開放的になれたからか
買うことにしました。

病気の症状からくる、うつ状態かも・・・と言われていたのですが
音楽を聴くことが、まったく出来なくなっていました。

何も感じない・・何とも思わない・・
何にもない・・何も考えたくない・・

本当に辛い時って、どんな刺激も苦痛になってしまうのです。

CDをかけると、ピアノが奏でる深い絶望の鐘の音からはじまり
オーケストラの寄せては返す波のような音のうねりが
心を揺さぶりました。

正に、わたしが感じていた、どうしようもない現実・・絶望・・苦しみ・・

自分の感情と聴いている音楽が重なり
ぐるぐるとお腹の中に溜めていたものまで
竜巻のようになって、出て行く感じがしました。

暗く激しい第一楽章から第二楽章に移り
さっきとは、打って変わったような穏やかで美しいメロディ

痛みや辛さに耐えようと
いつでも緊張していた体の力が抜けていくのを感じました。

固く閉ざされていた心が
少しずつ、じんわりと開いていくようでした。

何回も何回も、くり返し聴きました。
いままでの分を取り戻すように

何回聴いても飽きることなく
何回も何回も、ずっと聴いていました。

CD屋さんに勤める友達に、このことを話すと
この曲は、ラフマニノフが精神科医の先生に
献呈したものだと教えてくれました。

精神的な病に侵されたラフマニノフが
病気を克服した後、お世話になった先生に
捧げたものだそうです。

だから、音楽を聴けなかったわたしでも
すんなりと受け入れることが出来たのだと思いました。

当時の辛い心と体に共感し、やさしく寄り添ってくれました。

音楽に救われました。
でも、聴けない時は、そのままでもいいのだと思います。
聴けるタイミングがきっと来るのだと思います。

ブログに書くなんて
当時は想像もできなかったけど・・・

あらためて、人生は長いし
いろいろな経験を積み重ねていくものなんだなあと思います。

2012年4月24日火曜日

バッハの会

譜読みをするのが、ある程度慣れてきて
色々な指使いにも、対応できるようになったころ

どの生徒さんにも、一度はバッハの曲に触れてもらいます。

いまから、300年以上も前にうまれた人
その人とも、その時代とも
かけ離れたところで生きているわたし達

それでも、バッハの曲を聴くと気持ちが落ち着いてきたり
演奏することで、癒されたりします。

いわゆるポリフォニーと呼ばれる
声部が重なった音楽なので

メロディ、伴奏と役割分担がハッキリしている
現代の曲とは、趣が違います。

はじめは、生徒さんに弾いてもらうのはどうなんだろう?

確かにテクニックを磨く点でも
バッハの曲は外せないのですが
好き嫌いもあるし・・・

実はわたしも小さい頃は
全然、バッハが面白くなく
ナント!先生の家で譜読みをするという
暴挙に出ていたことも・・・(先生、ごめんなさい;;)

恐る恐る、生徒さんに曲を聴いてもらうと・・・

「カッコイイ!!」

えっ・・??

長調のメヌエットなども、人気があるのですが
短調で、どんどん転調していくようなものも
すごく人気があるのです。

バッハ人気にあやかり
数年前に
「バッハの会」を開催しました。

プログラムはオールバッハ♪

「主よ人の望みの喜びよ」や「G線上のアリア」を
ピアノ連弾にアレンジしたものの演奏などもあり
楽しかったです!

お楽しみに、バッハクイズを出題し
皆さんに3択で答えてもらう
というのもやりました。

皆が答えにビックリ!した質問がコレ。

Q バッハには、子供が何人いたでしょう?

さぁ、何人でしょう??

見事、1人だけ、大当たりの生徒さんがいて
皆に「すご~い」と羨望の眼差しで見られていました♪



きっと、いまの子供たちは
感性も鋭いし、合わせて
深い精神性を持っているのだと思います。

もしかしたら、大人のわたし達よりも進化しているのでは?

と思うことがよくあります。

そんな彼らから、
いつも新鮮な驚きと知恵を
シェアしてもらっています。

2012年4月17日火曜日

腕は意外と重い!

ピアノは、指先だけを動かして
弾いているように見えるのですが

実際には腕全体から肩甲骨のところまで
すべて影響し合っています。

よく言われる「脱力」が
とても重要になってくるのですが
これが、とても難しいのです。

「力を抜いて・・・」と言われても
そうしているつもりなのに
まだまだ、力が入っていることが多いのです。

こんな時に、脱力の感覚、腕の重みを感じてもらうために
やっていることがあります。

生徒さんの手の平に、わたしの中指や人差し指などの指を
1本乗せ腕の脱力をして
指先にすべての重みを乗せていきます。

手の平で支えきれない程の重みに
生徒さんは
「先生、押してるんでしょ?」と聞きます。

決して、力で押しているのではなく
ただ、力を抜いているだけなのです。

今度は、交代をして、
わたしの手の平に、生徒さんの指を1本乗せ
その指だけで、重みを支えてもらいます。

なかなか、脱力が最初は出来ないのですが
「あなたの腕、こんなに軽いの?ホント?」と言いながら
どんどん、緩めて指先に乗せていってもらいます。

こうして、腕は意外と重い!ということに気が付いて
いきます。

重みをたくさん指先へかけていくと、フォルテが出ますし
うまくコントロールすることで、
弱い音から強い音まで幅広いダイナミクスが表現できることになるので

やはり、指先の感覚と合わせて
脱力は大切なんですね。

どうしても、緩められないときは
立ってもらい
歩行の時の、腕の状態にしてもらい
指先1本を手の平に乗せます。

歩行の時には、自然に腕は脱力しているので
指先に手の平を当てるだけで
重みが伝わると思います。

わたしも、からだが小さいから、
大きな音は出せないと思い込んでいましたが
重みの乗せ方がわかってくると
大きな音も出せるようになってきました。

力を入れるのではなくて
力を抜くことが、ポイントなんですね。

2012年4月10日火曜日

ピアノサークル

最近では、大人になってから
ピアノを始める方や
再開される方も多くて

「大人のピアノ」がブームになった後
定着してきた感があります。

皆さん、お仕事や家庭がありながらの練習なので
なかなか大変だとは思うのですが
とても熱心な方が多いです。

そして、とても楽しんでる様子がうかがえて
わたしも嬉しくなります。

お友達の参加している大人の方のピアノサークルに
誘って頂き、何度か参加させていただいたのですが

皆、順番に思い思いの曲を弾いていて
それも、押し付けがましくなく
それぞれ、ピアノと会話をしている感じです。

ピアノを弾いていない人は
隣の人と、おしゃべりしたり
お菓子を食べたり
もちろん、演奏を聴いている方もいますが
とても自由な感じなのです。

こんな風に、大人になっても楽しくピアノを続けているのを
最初に手ほどきをされた先生が見たら
嬉しいだろうなぁと思いました。

生徒さんで、ピアノサークルに入っている方に
サークルの主催する発表会のプログラムを
見せて頂いた事がありました。

とてもカラフルで凝っていて素敵!!
何でも、メンバーにデザイナーの方がいて
その方がいつも作ってくださるのだそうです。

会場の準備、進行など
全てをメンバーで手分けをして
舞台を作りあげるとのこと。

素晴らしいなぁと思いました。
文化祭みたいで、楽しそう!!

可笑しかったのが、プログラムの大トリで
ロッキーのテーマ曲の連弾を弾く男性がお二人

何故か!?この日のために、ロッキーのコスプレをして
舞台に上がるため、
筋トレをして、体を作ってこられたそうで・・・

なんだか、良くわからなくなってくるけれど(笑)
その辺も含めて、とても楽しそう♪

自由な発想でピアノを楽しんでいる姿に
沢山、沢山学ぶことがあるなぁと思います。

2012年4月3日火曜日

ありがとう!

地元の中学校の吹奏楽部の定期演奏会に
生徒さんのお母様からご招待いただき
行ってまいりました!

現、生徒さんや、元、生徒さんを合わせて
3人の教え子が
今回のステージに立っていました。

担当楽器が、バラバラなので
150人!!もいる部員の中から

「えっ~と、○○ちゃんはチューバだから、あの辺?」

と探すのが、大変でしたが
何とか、3人の姿を見つけて
ホッと一安心していました。

何だか、安心したからでしょうか?
ジワジワ~と心に来るものがありました。

皆さん、小学校の低学年から、手ほどきをさせて頂いた子ばかりで
小さな頃の姿が思い出されます。

「こんなに立派になっちゃって;;」
と感激してしまいました。

そして、音楽を選んでくれてありがとう!
と、感謝の気持ちでいっぱいになりました。

コンクールでは、いつも優秀な成績を残している
ブラスバンドの名門校なのですが
顧問の先生のご挨拶にも、心打たれました。

「今年は、震災の後ということもあり、
自分たちに、何が出来るか?ということを、ずっと、考えてきました。

コンクールに於いての勝ち負けだけでなく、
地元の方々に喜んでもらえるように
積極的に行事で演奏をしてきました。

いつまでも、みなさんに愛されるブラスバンド部でありたい。」


あ~こんな先生にご指導いただいて
みんな幸せだなぁ~と思いました。

「見上げてごらん、夜の星を」の演奏の途中で
主要なパートを残し
ほとんどの部員が立ち上がり
一斉に歌いだしました。

その柔らかで、純粋なやさしい歌声に
涙があふれでてきました。

たくさんの魂たちが、キラキラと輝いているようです。

歌声がわたしたち観客のハートを包みこみ
みんなをおなじ気持ちにさせてくれました。

素敵な演奏をありがとう!!
教え子のみなさん
これからも、音楽となかよく歩んでね♪